医療スタッフの人手不足問題・・・人件費はただの経費でなく投資です。

2019/11/17 ブログ

人件費は、経費の中で最も大きなウエイトを占めますが、かといって足りないと毎日の業務に支障をきたします。最悪な場合、スタッフが揃うまで閉院を余儀なくされているところや、先生自らが受付やお会計をしたり、その日の会計徴収ができずに診療だけ行って後日お会計を頂く(またご来院された人に限りますが・・)ところも実際耳にしますので、珍しいことではありません。

 

あれだけ花形の職業ともいわれ、宣伝や雑誌でも題材的に取り上げられていた医療事務員も、今は、なり手が少なく、募集をどれだけかけてもいい人材が来ないのが現状です。また看護師は有資格者である分、引く手あまたの状態で、いい環境の所でないとなかなかきてくれません。これからクリニックがどんどん増えていくのに反して、医療スタッフの人手不足が深刻になっていくでしょう。かといって面接に来た人だれでもよいわけではありません。いくら人が不足していても、使えない人は雇いたくないものです。充分に人数が揃っていて、人手不足知らずのクリニックとそうでないクリニックの違いはなんでしょうか。

 

その違いははっきりしています。人件費に関する考え方です。質の良い人件費を使っている。いえ、正確には「投資している」です。これにつきます。

人件費がもったいないから、足りなくなった時に考える・・・     

運よくスタッフがずっと辞めずにいてくれればそれでもよいかもしれませんが、大体そんな状況は一生続きません。必ずスタッフの入れ替わる時期が遅かれ早かれまいります。今何となくできているのであれば、それは決して当たり前の状況ではありませんので、うちは大丈夫!と安心している場合ではありません。何とか出来ている時だからこそ、次の事を見据えることが一番重要です。 

≪人手不足のクリニックが陥りやすい状況≫

①残されたスタッフが不安になって辞めてしまい、さらに人手不足となる。

②入って間もないスタッフについつい前のスタッフと同じクオリティーを早くに求めるのでプレッシャーになって結局やめてしまう。

③焦って膨大な広告費を使うことになる。

④人数が足りなくて新しいスタッフ教えている暇がない。その間に大きなミスが起こる。

⑤スタッフがコロコロ変わることに患者様が不安を覚える。

⑥焦って面接をして出来ない人を採用してしまい、逆に手をとられる。

⑦ドクターも不安を通り越し、イライラしながら診察をする。現場の空気が悪くなる。

一度状況が後手に回ると、ゼロではなくマイナススタートになるため、盛り返すのにかなりの時間と労力がかかりますし、心配で診療どころではなくなります。そうなると、残されたスタッフは、自分も早く辞めたほうがよいのでは?と逃げ腰になります。経営者はこの先の見えない不安で眠れない日々を過ごす話もよく耳にしますので決して他人事ではありません。

≪常にスタッフに恵まれているクリニックの例≫

①空いた時間に現場の掃除や整頓、何事も前もっての準備が余裕をもってできる。

②患者様への対応も丁寧にできる。

③インフルエンザ等の予防接種時期、特定健診期間、診療科によっての過渡期の体制を余裕もって準備ができる。

④スタッフも休暇が取れるので、普段から心に余裕をもって働ける。

⑤環境が良いので退職率が低い。

⑥早めに人材を確保するので余裕をもって面接出来、良い人材を獲得できる。

⑦スタッフ同士が仲良く悪口や不満が少ない。

安定したクリニックは普段から先にその状況を作っています。

そしてどんな時でも先を見据えて積極的に快適な環境をつくります。少々人件費がかかっても、何か起こったときの心配や膨大な広告費を考えたら、いい人材を早めに確保して経費を使うことは無駄ではありません。そして普段からのスタッフ補充と育成の経費を惜しみませんので、ある意味一生不安とは無縁の状況を自ら進んで作り上げています。

 確かに最初にお伝えしたように、人件費はかなりのウエイトを占め、雇うということは一定の金額がかかりますので、なかなか大変だとは思います。しかし、それは目先の金額で考えるのと、質のよい人件費を使って、それ以上のより良い現場を作るための対価であると思うか。経営者の資質が問われます。そして、それが何よりまわりまわって患者様に影響するということを含めて考えて頂きたいと思います。

また、質の良い人材が揃うところは新しい人材も高いスキルで育っていくのと、教える側も時間にも余裕があるのでじっくり丁寧に教えることが出来、確実な育成ができます。したがって、どんどん良い人材が育っていくので、常に安定したレベルの高い医療サービスを提供することができます。

医療の現場はお分かりのの通り、誰にでもすぐにできるものではありません。現場の空気になれるのに最短1ヶ月、普通でも3ヶ月はかかります。そしてきちんとすべてができるように育てようと思うなら6ヶ月~1年はかかります。それはどこの部署でも同じです。それを踏まえて普段からの育成心掛けないと、思わぬ退職者が出たときに慌てることになります。

どうか患者様の為に、いつ来てもいい環境で迎える場所であって頂きたいと願います。